癌患者と介護保険申請

40歳以上の末期癌の患者は介護保険が利用できる。延命治療ができないと診断された場合はまず拒絶されない。

この制度にはとても助けられた。

ここでは介護認定のメリットと我が家の認定までの流れを紹介する。

 

終末期の癌患者の家族としては、介護認定で受けたメリットは以下の3つである。

1.ベッドなど大型の備品も安くレンタルできる

2.医師だけでなく、ヘルパーさんにも助けてもらえる

3.家族が介護休業を取るのがスムーズ

 

1.備品レンタル

母の利用のきっかけは、すい臓がんの検査のために受けたMRIである。

この撮影時、身体を強く固定され、背骨を3本骨折した。もともと食欲不振で、骨がもろくなっていたのだろう。検査技師さんには予測もできない、まさかの骨折だった。

これがきっかけで、これまでの布団を床に直にひく生活が困難になり、母は悩み始めた。「もうBSC、いつ入院するかもわからないのに、ベッドを買うのは贅沢かしら?20万円くらいかけて私が死んだあと邪魔になるようなものを買うのは避けたい。ベッドってすごく大きいのよ」と深刻な顔をしていた。

介護保険を申請して電動のベッドをマットレス含めてレンタルしたら、起き上がり困難が解消されたようで心底安心した顔をしていた。背骨がひどい状態だったこともあり、マットレスの硬さで数回相談して交換してもらった。

癌患者は良い物があっても「もう死ぬんだし、もったいない。私にお金を使うなんて無駄だ」と自分を粗末にしてしまう。レンタルは受け入れやすかったようだ。

 

2.ヘルパーさん

癌で体力が落ちてきた母の入浴支援や洗髪などをお願いした。

母の部屋は2階、我が家の風呂場は1階であったが、背骨3本骨折では、階段の上り下りも一苦労である。

ヘルパーさんは簡易風呂を持参して2階での入浴を可能にしてくれた。

母曰く「すごいのよー!いきなりお風呂ができるのよ!至れり尽くせり。あんなすごい体験できるなんて!」とのことで、感激していた。

「あなたもやってもらいなさい!一生に一度は!」とまで進められた。

 

3.家族の介護休業

職場の介護休業は、癌患者の家族を前提としておらず、認知症などの老齢の方の介護を前提としている。

私の勤め先の場合は、いくつか適用条件があり、介護認定はその一つだった。

申請書に認定級数を書いてしまえば、診断書の添付や細かな説明などを省けるのでスムーズである。規定に則ているで、拒絶もされない。

 

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介護保険認定までは、3週間ほどかかった。そのフローと我が家の体験を書いておく。

1.地域包括支援センターに相談に行く

2.癌の主治医に意見書を書いてもらう

3.訪問面接

4.認定をせっつく

 

1.相談に行く

電話でアポイントを取り、その日すぐ癌患者の家族が出向き、センターで話を聞いてもらった。

この時、私から癌の診断からBSCと診断を受けた日付、現在の状況を説明した。

センター側からは確実に保険適用になるだろうということで、申請前からベッドのレンタルを開始できるよう取り計らってもらった。

その翌朝にはレンタル事業者がベッドを持って来てくれて、本当に助かった。フライングで利用させてもらえるなんて、相談に行くまで知らなかったよ。

 

2.主治医意見書

癌患者の場合は、癌の治療で通った主治医が意見書を書いてくれる。

骨が折れているからベッドをレンタルしたいとメモを添え、

診察予定のない日であったが、書類を預けて後日、引き取った。

 

3.訪問面接

癌の場合、本人の意思がはっきりしているので、介護認定の面接のときだけ、親がシャキシャキするという困ったミラクルは起きない。

ただし、これまで癌患者に付き添ってきた家族が見栄を張っていた。

「お料理もちゃんと考えたものを出している」「転ばないように配慮してライトを変えた」「こちらがちゃんと支えれば、骨折していても歩ける」などなど。普通は本人の見栄を介護者側が訂正するらしいので、まるで逆よね。癌患者を一番近くで支えるのは大変なので、認めてほしいという気持ちがあったんだろう。これまでの頑張りをダメだしされているようで不快だったんだろうね。

家族と患者それぞれから話を聞く時間を設けてもらい、正しく認識してもらうよう努めた。

 

4.認定をせっつく

これが長い。いつまでもいつまでも連絡が来ない。

相談から一週間が過ぎ、役所に電話したら、こうおっしゃった。

「本来は二週間後の会議で審査するんですが、癌の場合は緊急で対応することになっていて、来週の会議で審査予定です。」
いやいや、来週でも遅いでしょ。BSCって余命三か月でもおかしくないよね?と伝えたところ、その週の会議で「要介護3」と認定を出してくれた。