家族の癌で、介護休業を申請した話

 私は母の癌で介護休業を取って、その後復職した。

休職期間は約3週間、予期していなかったことだが、その間に母が亡くなったので、看取りを経て、職場に復帰した。

私は全社で100人未満の中小企業に勤めていて、これは社内で初めての介護休業であった。休職する前、何人かの年配社員に声をかけられた。「よくとったな」「俺はあの時取らなかったことを後悔している」「戻って来いよ、実績を作れ」。この先、取りたい人が取れるように、記録を残しておく。

 

ここでは、介護休業を取る前にしたことをまとめる。

1.人事に制度を聞く

2.家族に説明する

3.職場と調整する

 

1. 人事に問い合わせる

介護休業は取得者が少なく上司も経験がないので、人事に制度を確認してもらう必要がある。

・取得する資格があるか?

私の勤め先の場合は、介護保険「要介護3」認定でOKだった。もし、認定がなかったら事細かに状況説明や、自身のほかに介護にあたれる家族がいないことを説明しなければならなかった。末期癌の患者は、介護保険の申請をしておくことを強く勧める。

・取得予定日から何日前に申請しなければならないのか?

私の勤め先の場合は2週間前だった。癌は認知症よりも変化が急激なので、申請から取得までのタイムラグは非常に問題となる。仕事の状況によっては、短縮してもらえる。

 

 2.家族に説明する

介護休業は、癌患者本人も周りの家族にも取得者はほとんどいない。よって、誤解していることが多い。我が家の場合も3つ誤解を解く必要があった。

・誤解その1)介護休業を取ったらその期間中に死ななければならない

産休/育休に比べると介護休業は新しい。産休は出産予定日から逆算して取得し、実際の出産日に応じて延長されるため、そのイメージで判断したらしい。

そもそも介護休業は、「要介護者が十分な生活ができるように整える」ための休業であり、「介護をするための休業」ではない、と説明した。認知症だと介護が10年以上にわたることもあるのだから、介護をするために休んでいたら永久に仕事に戻れないよ、と。

・誤解その2)介護休業は会社員人生で一度しか取れない

パニックに陥った父が「俺の老後 は?母さんに使っちゃったら、もう取れなくなっちゃうじゃないか!」「俺がかあさんを看る、おまえが俺を看る」と言い出した。

介護休業は、父の介護、母の介護それぞれ別カウントだよ、それぞれにつき3か月とれるよ、と説明したら、すぐ落ち着いた。

長年連れ添った家族がいなくなるかもしれないのはとても怖い。一般的には高齢者は女の方が長生きなので、父も妻が夫を看取り、子供が妻を看取るイメージを持って、安心していたのだろう。それが、逆転して自分の老後が不安で仕方なかったようだ。

・誤解その3) 介護休業はまとめて3か月しか取れない

 癌患者本人が「ここぞ、という、一番しんどい時にとってほしい」と言う。

そして「明日申請して」と言ったと思ったら、翌朝「やっぱりいい、まだ頑張れる」と電話をかけてくる。

そこで「そもそも3回に分けてとれるよ、トータル3か月だよ。」「ちょっと試してみて、残りは取っておくこともできるよ。」「三か月以内なら予定期間より延長もできるよ。」と伝えた。

 

これでようやく癌患者および家族から「取って!今日申請して!」と言われた。

 

3.職場と調整

私自身は「家族が癌になった」ことを診断直後に職場に公表し、急変に駆け付けられる体制を取ってもらっていた。この点すごく感謝している。

癌患者の家族となってからおよそ1年、病状を報告しており、BSC方針となったことも知らせていた。

このため、介護休業取得して!と癌患者に言われ、上長に申請したいと伝えたら、1週間で休業に入れた。

 

 AzusaYama